中野京子さんの『はじめてのルーヴル』を読みました。

中野京子さんの本を読んだのは11冊目です。
この前に
この本を見て、見落としてはいけない画家をメモしておきました。
そしてこの本で中野京子さんのアドヴァイスを参考に追加して、完璧。
ここでプラスしたのはヒエロニムスボスの『愚者の船』と、日本人に人気あるというアンリルランベール『アモルの葬列』だけです。
ほぼ完ぺきに抑えられたのは、今まで中野京子さんの本をたくさん読んできたからでしょう。
ルーヴル美術館で誰もが絶対に見落とせない三作品は『モナリザ』『ミロのヴィーナス』『ナポレオンの戴冠式』だそうです。
それはわかるけど、モナリザはまだ見たことないのにお腹いっぱいな感じです。
私が一番楽しみなのはルーベンス『マリードメディシスの生涯』あらためて中野京子さんの解説は面白かったです。
ハリウッド映画のルーベンスに対してプッサンを純文学とたとえるのも、中野さん、すごい。
プッサンとクロードロランも楽しみなんですが、ちょうどこの月火とNHKBSでルーヴルの番組をやっていて、このかたたちの付近はすいているそうです。落ち着いて見られそうです。
その番組で私の嫌いなルイ14世のことも詳しく説明していました。バレエの5つのポジションは彼が考えたそうです。もう彼の偉大さを認めるしかないですね。
それから、マルガリータ王女は、なんの先入観もないラベルのような気持ちで見れたらいいなあ。それにしても、ベラスケスとラベル、さすが一流の芸術家同士、言葉ぬきで通じるものがあるんですね。
モナリザについてお腹いっぱいと書きましたが、さすが中野京子さん、そんな私の気持ちを見越して語ってくださっています。
じっさいにモナリザを見たとき、中野さんのこの問いかけを考えてみます。
「ふと思うのだけれど、でももしこの『モナリザ』を描いたのがダヴィンチではなく、ラファエロやルーベンスだったらどうだろう?どこか捉えがたい人間性を秘めたダヴィンチではなく、明快で理解しやすく、まっすぐ世俗的成功を目指し、みごとに全てを手に入れた、ラファエロやルーベンスであったら……これほど人気は沸騰したろうか?」
前回同様、mixiソーシャルライブラリーのフォロワーである
Claude Monetさんのレビューも紹介します。
中野京子さんのルーヴル解説本である。ルーヴル美術館は「過剰」であるという。現代の情報社会を表すような言葉「過剰」で表される美術館の中から絵を選ぶ行為はエネルギーを使いきり疲弊をする。ルーヴル美術館に案内無しに入れば、すなわち美術ファンでも疲弊をすることだろう。疲弊をものともしない美術ファン以外のひとに、中野さんがお勧めを選んだ本であるとのこと。
この本の内容は、ウェブマガジンで連載されていたときにしっかり読んでいる。しかし、やはり本を手にとって読むのは全く違う行為である。中野さんの本には絵画の解説以上のものがある。そこには絵が描かれた時代に生きた人間の「物語」が語られているのだ。美術館に行って、その絵がどこの国のどの時代に描かれたかくらいはキャプションでわかるが、その時代の誰が、どうして、この絵を画家に描かせたのか、その「物語」は解らないのが普通である。ここで紹介されている絵はみな、近現代のように画家が自発的に、不特定の買い手のために描いた時代ではない。だから、この「物語」は絵を知る上ではとても重要なのである。絵を観ることは画家だけではなく、そこにいた人の「物語」を知ることで大きな意味を持つ。そして、歴史の大きな流れを知ることになる。それが楽しい。
ルーヴル美術館は、フランスの歴史だけではない「過剰」な歴史をその中に蔵している。多くの人の「物語」が蠢いている。それはとても興味深い美術館であり、その物語の過剰さに気付かなければ、単なる疲弊を強いる美術館であるとしか感じないのではないかと思う。そんなことがないように準備するとしたら、やはりこういった「物語」を沢山読んでからがいいかもしれない。美術は観に行くことが楽しい。ルーヴル美術館に絵を観にいくということは、普段の観ることと次元が違うのである。この本をきっかけに中野さんの「物語」を読みなおし、ルーヴル美術館に何度も挑んでみたいものである。
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ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり―に行きました。
素晴らしい企画展でした。
おそらく私にとって今年一番

いえ、昨年と合わせても一番。

私はこの四年間で、西洋史の本を79冊(漫画16冊含む)美術の本31冊、塩野七生女史の本60冊、中野京子さんの本13冊、ヤマザキマリさんの本10冊(漫画含む)さらに旅の本も数冊読みました。
この、地中海の歴史を訪ねる旅ともいえる

地中海四千年のものがたり

読破した本に描かれていたことや登場人物を思い出しながら
ジーンとしながら、楽しませていただきました。
先週土曜日に北川景子さんの「地中海 女神たちを探して」前編を見ました


美しい地中海と景子さんにうっとりでした。
今度の土曜日放映の後編も見逃せません!
そして行く前にぜひ読んでいただきたいのが
里中満智子さんの『マンガギリシア神話全8巻』です

「ローマの石棺:人間の創造とその運命を表すティタン族プロメテウスの伝説」

プロメテウスは第一巻からずっと気になって
第五巻で落ち着きました。お勧めです。
そして、第三巻の「オリオンとアルテミス」の物語を思い出すたびに目が潤みます。
ただし、第一巻から読むことが大事。
アルテミスは、高潔で、弓を持って山野を駆けて狩りをします。
男に裸を見られると、激しく怒り

たとえ故意でなかったとしても、厳しく処分します。
痴漢の冤罪みたいなものです

このアルテミスが、今回の目玉「ギャビーのディアナ」です。

ルーヴルに収蔵されて以来約200年ぶりに館外に出品されたそうです。
とても可愛いです。
こんなにおてんばなのに、ドレープがとてもエレガント。
彼女のまわりを歩きながら、いろいろな角度から見ました。
服の下から覗きこんだりもしました。
私が男だったら、鹿に変えられてしまうところでした!
おそらく、ルーヴル美術館では、
この作品をこんなにゆっくりは見られないと思います。
日本に来てくれたから、時間をかけられました。
アルテミスのそばにはパリスが。

彼については第七巻の「トロイの木馬」
でもやはり第一巻から読んでほしいです。
「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」ギャヴィン・ハミルトン

↑このパリスの像は、ハドリアヌスの別荘付近で出土したそうです。
そういえばローマ皇帝ハドリアヌスの像も、アウグストゥス帝とセプティミウス・セウェルス帝とならんで展示されていました。

そのローマに徹底的に破壊されたのがカルタゴ。
数少ない出土品のひとつがこれ。なんて可愛い。
「ひげのある男の頭の形をしたペンダント」

今回はじめて知ったのですが、
カルタゴをつくったのはフェニキア人で、
彼らは今のレバノン・シリア付近出身だそうです。
フェニキア人のこと、
もっともっと知りたいです。
地中海の歴史、奥が深いです。

『印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ』を読みました。
中野京子さんの本は13冊目です。
私はクラシック好きで、
印象派絵画の中には受け入れがたいものが多々あるのです。
でも最近「オルセー行くかも」と思うようになったので、
大好きな中野京子さんのこの本を読んでみました。
最近読んだフランス近代史の中で、最高に面白かったです!
歴史本に挿絵がついている、という感じです。
印象派の絵も、時代を反映しています。
鑑賞する前にこの本を読んだほうが、ぜったい楽しめると思います。
今回もmixiソーシャルライブラリーのフォロワーである
Claude Monetさんにレビューをいただきました。
いつもありがとうございます。
ワシントンナショナルギャラリー展が無事開幕して、日本における印象派熱が高まる気配である。パリの印象派 については、絵画も何度も目にしているし、簡単なことは知っているが、我々はより深く知ることをしていないかもしれない。それは、印象派の絵のわかりやす さゆえであろうし、また印象派の絵は、背景が希薄で面白みに欠け嫌いだというかたもいる。他の時代の絵では、そうはいかないことを知っているし、詳細な解 説になる参考書も多く、それを読むことをするのであるが。
しかし、それでいいのだろうか。印象派にも、その絵画が生まれてきた時代的な背 景がある。それを知って観るのと知らずに観るのでは、印象は変わってくる。パリの19世紀後半という時代に生きた画家が描いた絵画であり、またその時代に 生きた描かれた人たちである。当時の新しい文学や演劇や写真などの芸術も対象にしたこの社会を知ることも意味があろうし、それもこの本では十分に紹介して くれている。。印象派をよく知っているというかたには物足りないかもしれないが、はじめて知るかたにはとても親切なよい入門書である。また、今回の展覧会 の印象派以前やポスト・印象派にも触れているところはうれしい。
『「怖い絵」で人生を読む』などと同じように、中野京子さん式、絵画のポ イントを矢印でチェックするトリヴィアルな紹介があるので、いままでその絵を知っているつもりになっていても、必ず新たな発見がある。この本自体は、横浜美術 館で行われた「ドガ展」に関する講演をもとにしているそうだが、印象派の中でも自然を描かず、社会を描いたドガの絵の解説だけに、同時代の光と闇が十分に 説明されている。
また、文章の中にはワシントンナショナルギャラリー展に出展されている絵も取り上げられている。とくに、なぜアメリカに 印象派の絵が多いかについての説明もされている。アメリカの美術館が聖遺物として印象派の名品を購入していた。もちろん、カサットの紹介や、デュラン= リュエルの積極的な販売もあったが、オールドマスターの傑作を持つことがすでにできなかったアメリカの美術館は、フランスでは、まだ評価がそれほど高くな かった印象派の名品を手に入れたのであった。フランスが買い戻そうとして高額を提示しても、聖遺物を手にした美術館は、渡すわけにいかず、アメリカに多く の印象派の名品がある。
印象派の絵の背景を知ることは、画家と描かれたものと、作品との間の乖離を生むこともある。しかし、実際に展覧会に行って作品と対峙したとき「にもかかわらず美しい」と感じることが芸術の魅力であるという。
こ の本を読んで、印象派の知識も得て、ワシントンナショナルギャラリー展に行って印象派の「にもかかわらず美しい」を実際に体験してきていただきたいと思 う。はじめて印象派の絵画を観たときの「ああ、美しいなあ」と感じたことを、すこし異なる感覚で追体験できるようになると思う。 読了日 (2011.6.10)